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「ねぇ、リボンズ…『人間』って、本当に莫迦だね」
優雅に足を組みながら、ソファに座ってヴェーダからの情報を眺めているリボンズに、階段を下りて近付きながら声をかける。
「…いきなりどうしたんだい？」
それらの情報から視線を逸らすことなく、リボンズは口先に笑みを浮かべて、僕の言葉に返事をする。
「だって、莫迦じゃないか。…いや、『愚か』っていうべきなのかな？」
リボンズの後ろに立ち、ソファの背もたれに肘を立てながら、彼の目にしているものを一緒に眺める。


――映し出されるのは、世界各国の情報。
世界統一とは名ばかりの、アロウズによる武力支配。
それを認められないソレスタルビーイングによる武力介入。
抑制されることに耐え切れず、アロウズに反旗を翻す者達の武力行使。
…戦争がなくなる気配など微塵もなく…それは寧ろ酷くなった。
擬似太陽炉という殺人兵器が。ガンダムという殺人兵器が。戦争に拍車をかける。


「人間が存在している限り、争いなんてなくならないのに…本当に愚かだよ」
戦う彼等の映像を、見るともなしに眺めながら言うと、リボンズが微かに笑う気配がした。
「…口先だけの平和を望んで、綺麗事を並べ立てるけど、結局人間は戦わずには、争わずにはいられないんだよ」
そんな歪んだ人間の真実に早く気づけば良いのに。…早く、思い知れば良いのに。
モニターを。その、画面に映し出された人物を見ながら、そう思う。


――早く帰って来れば良いのに。


今まで、彼はヴェーダに忠実だった。
ヴェーダとの接触が出来なくなったときの…ヴェーダに見放されたと、傷ついた彼の顔は好きだったな。
そう、僕らはヴェーダなしには生きられない存在なんだもの。

でも、ある時から彼ははヴェーダに依存しなくなった。
人を拒絶しなくなった。
彼の色々な表情が見れるようになったのは、とても嬉しい。
特に、傷ついた表情をしている時の彼の顔が好きだ。

――だけど、面白くない。
ヴェーダに依存しないということは、僕の存在を否定しているようなものだ。
…確かに、彼は僕の存在を知らないだろうけどね。
造られた時は一緒だけど、彼と違って僕はつい最近生まれたんだから。
だから、僕は彼を知っている。
ずっと知っている。
狭いカプセルの中に閉じ込められながら、彼の見る世界を見ていた。
彼の世界が僕の世界だった。
彼は知らないだろうけど、僕たちは繋がっている。
誰よりも、何よりも深く強い絆で。


だから、彼が僕以外…ヴェーダ以外のことに興味や関心…ましてや、好意を抱くなんて面白くないし、許せない。
彼が人間に対して好意を抱くというのならば、人間なんて滅びてしまえば良いと思う。
彼が好意を抱くもの全てが消えてなくなってしまえばいい。
そして。
大切な人を失って、傷付いて。
心も体もズタズタに切り裂かれて、僕のところに帰って来ればいいのに。
僕の大好きな…今にも泣き出しそうな顔で、悲しみに打ちひしがれて、絶望の淵を歩いていればいいのに。


そうしたら、僕が慰めてあげるのに。
これ以上ないくらいに、言葉と暴力で彼を傷つけて、心を引き裂いて。
そして、優しく慰めてあげるんだ。
僕以外を認めないように。僕を恐れつつも、僕に縋って、僕しか頼れないようにしてあげるのに。
――…僕が彼の、たった一つの真実になってあげるのに。


「……早く、僕のところに帰っておいで」





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以下、言い訳と妄想。（長いよー！）

えっと。彼＝ティエリアです（汗）
ほら、リジェとティエってそっくりじゃないですか。
ティエの正体とかそういったものはさっぱり分からないんですけど、ＯＰで一瞬、カプセルというか、培養器（？）というか…そういったところに入っているティエリアが出るじゃないですか。
そこからも妄想しちゃったわけですよね。

ティエリアはヴェーダによって造られた命で、ソレスタルビーイングにいるのも、そのため。
で、リジェがティエと似ているのは、ティエが見ている物を、世界を見るため。
いくら造られた命でも、人格があるわけだし、何よりも多くの人と触れるわけですから、色々とヴェーダの計画に差し障りが起こる可能性とかもあるわけで。
ティエを監視する存在としてリジェが造られたのかなとか、そんな感じ。
４年前（１期）の時はティエはまだヴェーダっ子だったので、リジェは機械の中で眠りながらティエの見るもの・感じるものを一緒に見ていたのかなって。
で、現在（２期）でティエはヴェーダに頼らなくなってしまって、ヴェーダからの道を逸れてしまったわけで、造られた命でも「人間」として生きるようになってしまったので、ますます監視が必要だってことでリジェが目覚めた…とかだったら面白いなって！（笑）
ティエが造られた時からずっとティエの世界を見てきたから、リジェの世界の中心はティエで、独占欲もハンパないかなって。
小さな子供がおもちゃを独り占めしたがる感じ。

傷ついた顔が好きだとか、傷つけて泣かせて慰めてあげたいとかは、完全に痛い妄想ですけどＮＥ！
何かそっちの方が歪みって感じがするじゃあいですか…（こういう暗黒思想が好きだってことは秘密です）

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「そんな…ロックオン！？」


――…あぁ、まただ。
また、俺を通して兄さんを見ている。
切なさと、嬉しさが混じった戸惑いの瞳で俺を見る。


「…そんなに似てるかな？俺と兄さんは」
…もう、何度目の科白だろうか。
零れ出そうになる溜息を笑顔で押し隠し、極力ふざけた口調で言葉を紡ぐ。


「そ、そう…ごめんなさい」
これも、何度目か分からない反応。
傷ついたように一瞬、目を見開き、そして伏せる。
…謝罪の言葉とは裏腹に、「俺」を拒絶するかのように、俺の顔を見ない。
俺を…兄さんと同じ顔の俺を、とても受け入れられないという、本当に一瞬の、見えない拒絶。


――…彼らの反応を見ているだけで、兄さんは皆に好かれていたんだということが分かる。
きっと、ここでも兄さんは皆をまとめる役をしていたんだろう。
………優しい、人だった。
…面倒見のいい人だった。
困っている人に手を差し伸べる人だった。
俺と生き別れた後も、兄さんは変わらず兄さんのままだった。
テロで世界が歪んでも、兄さんは変わらず、俺の知っている兄さんのままだった。


それが分かるのは、嬉しくて…悲しい。
今まで知る術がなかった、兄さんの生きた証を知ることが出来たから。
それと同時に、兄さんが本当にこの世界からいなくなってしまったのだと、知ってしまったから。


――…そして、ここにいる人たちの反応。
「ロックオン」という名前を口にする度、俺越しに兄さんを見ている。
心の何処かで、俺を通して兄さんを探している。

例えば、それは俺を呼ぶときの声や顔。
例えば、それは俺の態度や発言。

それらが兄さんと同じだと、彼らは一瞬、酷く戸惑い…また、違うなら違うで、彼らは一瞬、何処か傷ついたような…失望したような顔をする。
「やっぱりコイツは兄さんじゃないんだ」という、一瞬の、無言の言葉が、聞こえてくるような気がする。


「…分かってはいたが…これは、正直しんどいな」
誰に言うわけでもなく、一人言葉を零す。

俺は兄さんじゃない。俺は俺だ。
俺に兄さんを求められても、俺にはどうすることも出来ないし、そんなのはゴメンだ。
でも、例えそれが一瞬とはいえ、彼らは俺を通して兄さんを見る。
それならば。


――…お前等の、「ロックオン・ストラトス」を変えてやる。



「ロックオン」という存在を兄さんから、俺に変えてやる。
兄さんを返してくれなかったんだ。
たった一つの俺の片割れを。、たった一人きりの身内を。たった一人きりの大切な存在を。
俺から奪っていったんだ。
だから、お前等から「ロックオン」を奪ってやる。
…このくらいの復讐、してもいいだろ？






はい、そんな感じのライルを妄想しています。
本編を知らないが故の妄想です。

でも、実際につらいと思うんですよね。
皆きっと、「違う存在」って頭では分かっていても、心の何処かではライルを通してニールを見ているんじゃないかなって思うわけですよ。
やっぱり同じ顔で同じ声で。違うって分かっていても、やっぱり考えてしまうと思うんです。
で、ライルはそれを敏感に感じ取ってしまう。
一瞬の、本当に一瞬だけの戸惑いだから、気づかれてないと皆は思うけど、ライルはそれを鋭く感じてしまうんだと思うんです。

だって、誰よりもニールの存在を意識していると思うから。
ニールと自分は違う存在で、なりたくても自分はニールにはなれないんだって、誰よりも感じてしまっているから。
だから、一瞬とはいえ、彼らの戸惑いで、何を思い、何を感じているのかを知ってしまうんだと思うんですよ。

だからこそ、自分はニールとは違うんだと、全く別の人間なんだと思わせるために色々と酷いことをしているのではないかと。
そして、同じコードネーム「ロックオン」を名乗ったのも、彼らに奪われた二ールを取り返そうとしているのではないかと思っていたわけで。

そんな痛い妄想でした。

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